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聖なる夜
──聖なる夜──
赤、青、黄、白、緑……
街の木や植え込み、オブジェ、建ち並んだ店先で輝く、色とりどりの華やかなイルミネーション。
その中でも一際煌めいて見えるのは、夜空の星まで届きそうな程の、大きなクリスマスツリー。そこへ向かって流れていく、沢山の恋人達。
その中を、野郎二人が肩を並べて歩いているんだから……恥ずかしい。
「……やっぱり、帰ろう?」
少し照れたように、大きな瞳を潤ませながら言えば、隣を歩く背の高い竜一がさくらを見下ろす。
「何だよ。あともう少しで、でっけーツリーの下なのによ」
「やっぱり、男二人は……」
「──いいから、行くぞ!」
怖じ気づくさくらの二の腕を掴み、竜一が強く引っ張った。
「……」
さくらの脳裏に映し出されたのは、昨日の出来事──
「……でね。あの大きなクリスマスツリーの下でキスすると、永遠に結ばれるんだってぇ!」
家の近くにあるコンビニで買い物をしていると、店に入ってきたカップルの女の子が、彼氏らしき男性の腕に絡み付いたままきゃっきゃと騒ぐ。
……大きな、クリスマスツリーの下で……かぁ……
想像しかけて、止める。
僕には縁の無い話──そう思い直したものの、何処か諦めきれなくて。
スマホを取り出したさくらは、密かに想いを寄せていた竜一にLINEを送った。
《駅前のロータリーから公園に行く道沿いに、大きなクリスマスツリーがあるでしょ? その下でキスすると、永遠に結ばれるんだって》
《竜一、知ってた?》
《もし僕達が知らずに見に行ってたら、……どうなってただろうね》
真剣な横顔。僕の腕を引っ張る竜一が、人混みの中をすり抜けていく。
やがて大きなツリーの下に辿り着くと、竜一が手を離す。
「……キレイ」
そんな事も気付かない程、見上げるツリーは綺麗で。自然と笑みと声が溢れるのを、止められない。
近くで見ると、より迫力を感じる。
煌びやかな光がランダムに点滅し、さくらの顔に当たって様々な色に染める。
「なぁ──」
「……え」
瞳を輝かせるさくらに、竜一が声を掛ける。
「もっと、こっちこいよ」
チラリと見上げれば、ツリーを見ていた竜一の頬が、反射した光の点滅に紛れるようにして、少しだけ赤くなっているような気がして。……恥ずかしくなって、俯く。
「い、いいよ……」
「ぶつかるだろ、他の人に」
「……え……」
そう言われた矢先、トンッと背後から来た人と肩がぶつかる。
瞬間──蹌踉けた身体は、竜一の腕の中へ。
ふわっ……
微かに香る、竜一の匂い。
力強い腕。温もり。息遣い。
その全てを感じ、一気に熱が灯る。
「……っとに、アブねぇな」
耳元で感じる、竜一の声。
驚いて見上げたその視線の先には──
「……ご、ごめ……」
「お前が誘ったんだろ」
離れようとする僕の後頭部に、竜一の大きな手が宛がわれ……
「……!」
間近でぶつかる、熱い視線。
お互いの鼻先で交差する、熱い吐息。
キスまで、あと3秒──
Merry X'mas
and
Happy end
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