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なのかちゃん。
これは私が小学校三年生の時のこと。
今思い出してもぞっとする話。一般的な怪談とは、少し違うのかもしれないけれど。
三年生の時、私のクラスになのかちゃんという女の子が転校してきた。後頭部で、いつも大きなリボンのような飾りをつけていて、大きなお団子頭を作っているとても可愛らしい少女。お母さんがとても器用な人で、毎朝忙しいにも関わらず綺麗に髪の毛を整えてくれるらしい。
父親が転勤族だったと聞いている。お父さん一人を単身赴任にするのが嫌だから、家族みんなで引っ越しを繰り返しているのだと言っていた。家族思いなんだね、なんてことを私は言った記憶がある。自分だったら、せっかく友達ができた小学校を何度も転々としなければいけないのは正直嫌だと思ったからだ。
ところがそんな私の言葉に、なのかちゃんは気分を害した様子もなく言ったのである。
『そりゃ、あたしも転校はやだよ。でも、パパと離ればなれになる方がもっと嫌だもん。家族はいつも一緒がいいの。遊びにいくのも、大変な時も、いつも一緒に支え合うのが一番だってママが言ってた。あたしもそう思うの』
ちなみに、その時私は学級委員をやっていて、いわゆる優等生系女子というものだった。自分で言うのもなんだが成績も良かったし、先生の信頼も厚かったと思っている。彼女が転校してきた時も、なのかちゃんがみんなに馴染めるように気にかけてあげてね、と先生から直接言われていたほどだ。
ゆえに、彼女が転校してきた直後、私は特に意識して話しかけるようにしていたわけだが。
すぐに、心配は無用だったと悟るのである。なのかちゃんは明るくて元気で、いわゆる天真爛漫といった雰囲気の子だった。男の子も女の子も問わず、すぐにたくさんの友達ができた様子だったのである。
――でも、またすぐ転校しちゃうのかな。せっかく友達になれたのに、そうなったら淋しいな。
彼女が転向してきたのは、五月のこと。一カ月もする頃になると、彼女はすっかりクラスに馴染んでいたし、私とも親友と呼んで差支えない関係になっていたのだった。
またいなくなってしまうかもしれないからこそ、それまで楽しい思い出をたくさん積み上げておきたい。この時、私は心からそう思っていたのだった。
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