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あの日、二人で約束を
赤い夕焼け空が広がっている。薄っすらと黄金色に染まった或る高校の校舎の中は、放課後の緩みきった空気に満ちていた。
しかし一方で、その奥の方にひっそりと佇む化学準備室では──2人の男女が、それぞれ緊張した面持ちで立ち尽くしていた。
いや、正確には1人の女子は仁王立ちして腕を組み、もうひとりの男子は、額を床にこすりつけて土下座をしていた。
***
「俺は、三日月さんが拾ってくれた消しゴムを百貨店で購入したガチのショーケースに入れて、周囲を金の帯で装飾して部屋の真ん中に永久保存しています!」
沈黙。三日月と呼ばれた女子は、彼の懺悔に何も言わないまま、黙って立ったままだった。
「俺は、2年前に母親が大事にしていた数十万円の高い壺をうっかり割ってしまった挙げ句、その破片を花壇に埋めて証拠隠滅しました!」
涙混じりに、その男子はもう一度額を強く床に打ち付けた。
だが、相変わらず室内には沈黙が流れている。
「俺は、自分を主人公にして描いた『実は淫魔な三日月さんと僕とのラブラブ同棲本』で、夜な夜な気持ち悪い妄想をしてエロ本の代わりにしていたド変態です!」
声を張り上げて、彼は己の中に眠る最大の秘密を叫んだ。
室内は、しんと静まり返っている。目の前に立ち尽くすクラスメイトの女子──三日月 乙音は、無言で彼を見下ろしていた。
脈拍が早まっているのを感じながら、蔵林は蛇に睨まれた蛙のように縮こまった。
三日月の眉間によるしわが一層深まり、顔面は憤怒の赤に色濃く染まった。
小さく息を吐きだし、彼女は口を開いた。
「──だからそれ、全部知ってるんだってば」
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