あの日、二人で約束を

3/3
前へ
/13ページ
次へ
 それから数時間。  告白、つまり「隠していた心のうちを打ち明ける」ことを要求された蔵林は、自分の人生における隠し事を、すべて洗いざらいぶちまけていたわけなのだが── 「うん、駄目だね。頑張って話してくれたみたいだけど、行きつけのサウナも好きなAVもネット上でやばいことつぶやきまくってるアカウントも、全部知ってる」  三日月は、組んだ腕をほどかぬまま(うなず)いた。長いまつげを伏せて憂いの面持ちを浮かべている彼女は、見惚れるような美しさだ。    しかし、気になる点がひとつ。  力なく床に座り込み、蔵林はぼんやりと三日月を見上げていた。 「なんでそんなに、俺のことを知ってるんですか・・・・・・」  ぼそりと口にした言葉は、しかし、三日月のあまりにもあっさりとした返答によって遮られた。 「そりゃ知ってるわよ。だって私、」    ***  蔵林は床にへたり込みながら両手で頭を抱え、弱々しい声で三日月に物申していた。 「ストーカーって──なんで俺のことを」 「当然でしょう。私が君に対して、それほどの興味関心と抗いがたい魅力を感じたからよ。まあ、趣味の人間観察が少々行き過ぎてしまったのだと思えばいいわ」 「はあ・・・・・・?」  妙に抽象的な物言いをして、三日月は得意げに鼻を鳴らした。  それから両手を広げ、意気揚々と言い放ったのである。 「さあ、蔵林くん。生きているうちに、この私にしなさい!」  高らかに告げられた言葉に、蔵林は再び、うへぇと呻いて頭を抱えた。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加