かの日、二人で日々を

1/2
前へ
/13ページ
次へ

かの日、二人で日々を

 そんなこんなで、蔵林は世にも奇妙なことに付き合わされ始めた。 「途中で諦めたら、君の秘密のすべてを公開する」と脅されたがために。      *** 「『告白』── 好意を寄せる人に自分の気持ちを伝えること。愛の告白。もしくは、隠していた心の中を、打ち明けること」  満月が家々を照らす深夜。自室の机の前で、蔵林はパソコンの画面を凝視しながら、苛立たしげに爪をかじっていた。 「隠していた心の中、か・・・・・・」  日中、三日月の言っていた言葉を思い出してみる。  彼女は自分を、日夜監視している。ゆえに、蔵林陸也という人物について知らないことはほとんどない。  だからこその、「告白をしてほしい」なのだ。彼女はそう言っていた。 「そんなにされたいなら、まず盗聴とか止めてくんないかなあ」  本人に直接聞こえていることを前提に、蔵林は声を張り上げる。しかし当然返事はない。  なんだか馬鹿らしくなって、口を閉じた。  要は、彼女に知られぬように「秘密」を作ればいいのだ。  それは、モノでもヒトでもコトでも構わない。ただ、彼女にバレさえしなければいいのである。 「ったく、非能動的な告白とかもはや告白じゃねえだろ・・・・・・」  蔵林は、壁に埋め込まれている盗聴器に音が拾われないよう、小さく呟いた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加