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2-1
ニナを知った日から数日経った。
あれから電車でも校内でも見かける事はない。
よくわからないけど、何か気になっていて、ふとした時に探す様になっていた。
入学して、同じ高校出身の伶也と連んでいたら、コミュ力バカ高いコイツのせい…おかげ?で男女入り混じった9人でほぼ毎日連んで生活するようになった。
だけど正直、たまに1人になりたい時もあった。
小中高とずっとバスケをやっていて、男ばっかで連んでた事もあって、常にテンション高い女は苦手だ。楽しい時もあるし嫌なわけじゃない。話すけど、笑うけど、女を全面に出して来られるのはムリだ。やめて欲しい。
今日もそんな感じで疲れて、空き時間に別棟のテラスに来てみた。
何か色々見られてる感じがしたけど、まあ、普段見慣れないヤツが来たんだからそんなもんか。知らない人ばっかりで逆に落ちつく。
コーヒーを飲みながら携帯を眺めて時間を過ごしていたら、後ろから悲鳴が聞こえた。
イヤホンを外して振り返ると、悲鳴の主がスカートを脱ぐところだった。
俺は目を逸らせなかった。スカートを脱いだその人に駆け寄って、自分の上着を脱いで巻いてあげるニナを見つけたからだ。
どうやら誰かとぶつかって作りたての汁がかかった様だ。
足元に散らかった残骸を気にする様子もなく、声をかけながら厨房に連れて行く。氷をもらえるようにと頼んでいた。
予鈴が鳴り、周りはその様子を気にしつつもその場を去って行った。氷を当てていた人も友達に連れられて出て行った。
1人で来ていたニナは席にバッグを取りに戻り、バッグを肩にかけた後汚れた床に目をやった。
キョロキョロと何かを探し、首を傾げた。
厨房に行き、床の掃除をできるものはないか尋ねる。厨房のおばちゃんは
「やっとくからいいのよー。授業行って行って‼︎ありがとねー」
とニナの肩を叩いた。ニナは笑いながら頭を下げて
「お願いします」
と言って出口に向かった。
上着のないニナは半端な丈のシャツ1枚で、少し寒そうに見えた。
自分でも驚く程、瞬間的に俺はニナに駆け寄っていた。
「これ、着て行って」
脱いだジャケットをニナの肩にかけた。
こっちを向いたニナは、俺を見て
「え?」
と言ったまましばし固まった。
「その服だと寒いから」
「あぁ…ありがとう」
と言いながらニナは下を向いた。
「あ、俺経営学部の森…です」
「文学部の坂下です」
「じゃ、俺あっちの棟だからお先に」
後ろでニナが何か言っていたみたいだったけど、俺は結構な勢いで走っていたので聞こえなかった。
そのせいか、やけに鼓動が速かった。
そして多分、俺はニヤついていた。
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