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ニナを知った日から数日経った。 あれから電車でも校内でも見かける事はない。 よくわからないけど、何か気になっていて、ふとした時に探す様になっていた。 入学して、同じ高校出身の伶也(れいや)(つる)んでいたら、コミュ(りょく)バカ高いコイツのせい…おかげ?で男女入り混じった9人でほぼ毎日連んで生活するようになった。 だけど正直、たまに1人になりたい時もあった。 小中高とずっとバスケをやっていて、男ばっかで連んでた事もあって、常にテンション高い女は苦手だ。楽しい時もあるし嫌なわけじゃない。話すけど、笑うけど、女を全面に出して来られるのはムリだ。やめて欲しい。 今日もそんな感じで疲れて、空き時間に別棟のテラスに来てみた。 何か色々見られてる感じがしたけど、まあ、普段見慣れないヤツが来たんだからそんなもんか。知らない人ばっかりで逆に落ちつく。 コーヒーを飲みながら携帯を眺めて時間を過ごしていたら、後ろから悲鳴が聞こえた。 イヤホンを外して振り返ると、悲鳴の主がスカートを脱ぐところだった。 俺は目を逸らせなかった。スカートを脱いだその人に駆け寄って、自分の上着を脱いで巻いてあげるニナを見つけたからだ。 どうやら誰かとぶつかって作りたての汁がかかった様だ。 足元に散らかった残骸を気にする様子もなく、声をかけながら厨房に連れて行く。氷をもらえるようにと頼んでいた。 予鈴が鳴り、周りはその様子を気にしつつもその場を去って行った。氷を当てていた人も友達に連れられて出て行った。 1人で来ていたニナは席にバッグを取りに戻り、バッグを肩にかけた後汚れた床に目をやった。 キョロキョロと何かを探し、首を傾げた。 厨房に行き、床の掃除をできるものはないか尋ねる。厨房のおばちゃんは 「やっとくからいいのよー。授業行って行って‼︎ありがとねー」 とニナの肩を叩いた。ニナは笑いながら頭を下げて 「お願いします」 と言って出口に向かった。 上着のないニナは半端な丈のシャツ1枚で、少し寒そうに見えた。 自分でも驚く程、瞬間的に俺はニナに駆け寄っていた。 「これ、着て行って」 脱いだジャケットをニナの肩にかけた。 こっちを向いたニナは、俺を見て 「え?」 と言ったまましばし固まった。 「その服だと寒いから」 「あぁ…ありがとう」 と言いながらニナは下を向いた。 「あ、俺経営学部の森…です」 「文学部の坂下です」 「じゃ、俺あっちの棟だからお先に」 後ろでニナが何か言っていたみたいだったけど、俺は結構な勢いで走っていたので聞こえなかった。 そのせいか、やけに鼓動が速かった。 そして多分、俺はニヤついていた。
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