La France et le Royaume-Uni.

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 運転席を離れ、コーヒーを二つ調達して車内へと戻る。僅かな距離を移動して公園の駐車場へと車を乗り入れた。 「おはようハーヴィー、そろそろ夜が明けるよ」 「ん……ぅ、……ロイ…?」 「体は痛くないかい?」  倒したシートの上でぎこちなく躰を伸ばすハーヴィーへとコーヒーを差し出して、ロイクは車を降りた。後部席のドアを開けて上着とストレッチ用のマットを取り出す。 「少し寒いけれど、気持ちの良い空気だよ」  助手席のドアを開けて差し出した手を、ハーヴィーは掴んだ。すっかりストレッチの準備の整えられた芝生に笑みを零す。 「おはよう、ロイ。私よりもあなたの方が用意が良い」 「君に体調を崩されたら、僕の首が飛びかねないからね」 「誰があなたの首を刎ねられるのか、そんな相手が居るのなら是非とも会ってみたいものだな」  冗談めかして言いながら、車を降りるハーヴィーの肩にふわりと上着が掛けられた。 「ありがとう」  車に寄り掛かり、コーヒーを片手にロイクはハーヴィーをじっと見つめていた。しなやかに伸びる躰に目を奪われる。寝起きにストレッチをするのはハーヴィーのルーティンワークだ。まして車内での就寝では躰も強張るだろう。  やがて立ち上がったハーヴィーが、ゆっくりとロイクを振り返った。 「あなたは? 眠くないのか?」 「僕は、向こうに着いたら少し寝るよ」 「そうか」  ハーヴィーが車内へと戻れば車は静かに動き出した。  徐々に明るくなっていく景色を車窓から眺めるハーヴィーへと、ロイクの声が掛かる。 「(Le)シャトル(Shuttle)の予約はしてあるのかな?」 「十時五十分発で取ってある」 「良い時間だね」  フランスのカレーとイギリスのフォークストン(Folkestone)を結ぶ英仏海峡トンネル(Tunnel sous la Manch)は、全長50.49キロメートル。カートレインのシャトルサービス、ユーロトンネル・ル・シャトルは、約三十五分でドーバー海峡を渡る。乗車前にイギリス・フランス両国の出入国審査を受ける事を考えれば、ハーヴィーの予約した便は妥当な時間といえた。 「列車内で運転を代わろう。眠れなくとも、少し休んだ方が良い」 「君がそう言うなら、少し休ませてもらおうかな」 「そうしてくれ。私だけ寝ていたのでは居心地が悪い」
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