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「ふふっ。君のそういう素直なところが、僕は大好きだよ」
ハーヴィーがクリスマスに教会へと足を運ぶのは、当然今年が初めての事ではない。十五時間もかけて子供たちにプレゼントを届けようなど、聞いた時には呆れもしたロイクだ。だが、そんなところがハーヴィーらしいとも思う。
「今年も、子供たちが喜んでくれるといいね」
「ああ、そうだな」
ロイクが言えば、ハーヴィーは嬉しそうに微笑んだ。
◇ ◇ ◇
教会へクリスマスプレゼントを届けたハーヴィーとロイクの姿はその夜、レディングから南へ七キロほど逸れた場所にあるホテルにあった。
ブドウ畑を見下ろす小ぢんまりとしたホテルは、ハーヴィーがクイーン・オブ・ザ・シーズで働いていたころ、気に入って使っていたホテルである。ロイクも幾度か訪れたことがあり、毛嫌いしているフィッシュアンドチップスも、ここなら食すことができると気に入っていた。
部屋へと入るなり寝台の上へと転がったロイクの姿にハーヴィーが笑う。
「さすがに、疲れさせてしまったようだ」
「優しい君が癒してくれるって信じてる」
「シャワーを浴びたらな」
素っ気なく言いながら、浴室へと消えたハーヴィーの耳が赤く染まっている事は、ロイクの視界にしっかりと入っていた。立ち上がり、後を追う。
十数分後。浴室で髪を洗ってもらい、ご満悦なロイクは寝台の上に再び躰を横たえた。ぼんやりと天井を見上げるロイクの目の前に、ハーヴィーはワインボトルを差し出した。
「少し飲まないか」
「いいね」
わざわざテーブルへと移動しようとするロイクを制止する。
「疲れているだろう? そこで飲めばいい」
「君が隣に来てくれるならね」
「相変わらず我儘な人だな」
「我儘? 違うね。僕は恋人に甘えたいだけ」
「ものは言い様だ」
呆れたように言いながらも、ハーヴィーはグラスを手に寝台へと歩み寄った。寝台に座るロイクへとグラスを差し出す。
「今日はありがとう、ロイ」
ワインを注ぎながら告げればロイクは柔らかな笑みとともに受け止めた。僅かに離れた場所に腰を下ろせば引き寄せられる。危うく零れそうになるワインをハーヴィーは慌てて持ち上げた。
「っ、ロイ」
「今夜は、君を抱かせてくれるのかな?」
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