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まさかと言いながらも、僅かに顔をこわばらせるマイケルをクリストファーは鼻で嗤った。
「冗談だ。本気にするな」
「もしそうなったら、クリスは俺を守ってくれるのか?」
「そうだな。その時は守るさ」
迷いなく告げられる言葉にマイケルはふわりと微笑んだ。クリストファーは、マイケルとの約束を必ず守る。
小さな電子音が部屋に響いて、マイケルは立ち上がった。バスルームの手前で立ち止まり、振り返るその顔が少しだけ赤い。
「クリスも、一緒に入るか……?」
「お前が可愛くおねだりしてくれるならな」
「っ、またお前はそうやって俺を揶揄うつもりだろう…!」
「顔を赤くしながら言われてもな。揶揄ってくれと言ってるようなものだろ」
「っ――、もういい! 一人で入る!」
マイケルの背中が壁の向こうへと消えるのを見計らい、クリストファーは音もなく立ち上がった。もう一度マイケルが顔を出すのを見越してバスルームのすぐ手前へと移動する。
案の定、マイケルは再び壁から顔を出した。
「入ってくるなよ!」
「それは聞いてやれないお願いだ」
「っ!?」
すぐ真横から応える声に驚くマイケルの首をすかさず引っ掴み、クリストファーはバスルームへと入った。脱ぎかけたマイケルのシャツをあっさりと剥ぎ取る。
「なっ、入ってくるなと言ったろう!」
「聞けないと言わなかったか?」
すげなく応えるクリストファーの手は、抵抗するマイケルをものともせず衣服を剥いでいく。あっという間に素っ裸にされたマイケルがわなわなと唇を震わせるその横で、クリストファーもまた自身の服を脱ぎ捨てた。
「いつまでもそんな恰好で立っていられると、襲いたくなるがいいか」
「駄目に決まっているだろう!」
伸ばされた腕をベシリと叩き落し、マイケルは浴室へと入った。すぐ後を追うクリストファーをじろりと睨む。
「せっかくの楽しい気分が台無しだ……!」
「そう怒るなよミシェル。お楽しみは、これからだろう?」
するりと背中を撫でる手を無視してマイケルはざっと躰を流しただけで湯に浸かった。顎の先まで湯の中へと沈み込み、不機嫌そうに言い放つ。
「……抱かないからな…」
低く告げられる声にクリストファーはわざとらしく片眉をあげてみせた。
「抱かれたいのか?」
「っ違う!」
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