寒いもんね

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寒いもんね

「結人、こっち来い」 「ん? 八千代、どうしたの?」 「寒ぃ」 「んわぁっ!!? ちょっと、学校でそういうのダメって言ったでしょ!?」 「おい場野。教室ではやめろよ。····周りが見ねぇように気ぃ遣ってくれてんだろ」 「そのまま見なかったらいいだろうが。寒ぃんだよ」 「わ··手冷たいね。あっためてあげるから貸して? そう言えば八千代ん家、暖房器具ガンガンだもんね。啓吾が暑いって言ってたよ?」 「アイツはガキだからな」 「はぁ〜? 場野がジジィなんだよ」 「あ、啓吾! りっくんは?」 「なんか書いてたから置いてきた。てかコイツさぁ、帰った時寒いからってエアコンのタイマーセットして来てんだぜ? 帰ったら暑いんだよなぁ」 「あはは。八千代ん家いつもあったかいもんね」 「お前ら、毎日場野ん家入り浸ってんの? あぁ、啓吾は一緒に住んでんだっけ?」 「うわっ!? なんで冬真居んの? あれ? 莉久は?」 「その莉久から伝言。これ、職員室に持ってけって」 「お〜、さんきゅ」 「冬真、おつかい頼まれたんだ。りっくんは?」 「えーっと····ちょっと教室でゴタってる」 「え!? りっくんどうしたの!?」 「あ〜····俺が押し付けた女の子の相手してくれてる」 「何それ。りっくん、女の子に絡まれてるの?」 「だってしつこかったからさぁ····。アイツ女の子かわすの上手いじゃん? プリント啓吾に渡してくるからって任せちゃった☆」 「えぇー····。あ、りっくんだ」 「神谷!! お前なぁ!! 俺に押し付けてんじゃねぇぞ! つぅか場野!! 教室でゆいぴ膝に乗せてんじゃねぇよ!」 「ぶっはは! 莉久めっちゃ機嫌悪いじゃん」 「大畠、笑ってねぇで書類持って行けよ。それ、進路の大事なヤツだろ?」 「あ、そうだった。行ってくるわ〜」 「うん、行ってらっしゃぁい」 「ねぇゆいぴ、俺んトコおいで」 「うん······って、八千代が離してくれないんだけど····」 「結人あったけぇからな。莉久なんかに渡すかよ」 「は? 俺も寒いんだけど。て言うかゆいぴ以外と喋った後はゆいぴ摂取しないとムリなんだけど」 「お前らなぁ、ここ教室だぞ? ちょっと抑えてやんねぇと、結人真っ赤になってんじゃん」 「あ、ゆいぴごめんね?」 「なぁ神谷、お前いつから結人のこと“結人”って呼んでるんだ? 誰が許可したんだ」 「え、結人の許可だけじゃダメなの?」 「結人、許可したのか? 俺は聞いてないぞ」 「····したっけ? そう言えば、いつの間にか結人って呼ばれてたような······」 「許可してないならダメだ。俺たちは許可しない」 「えぇ〜。瀬古さぁ、やっぱ俺の事嫌いなんじゃねぇの?」 「好き嫌い以前に、敵だと思ってるぞ」 「朔、冬真は僕たちの事隠すのに協力してくれてたんだよ? なのに敵だなんて····」 「でもコイツ、まだお前の事狙ってるんだぞ? 敵だろ」 「敵だな」 「敵だね」 「お前らもうちょいオブラートに包めねぇの?」 「ね〜······あっ!! 見て! 雪降ってるよ」 「マジか。寒ぃと思ったわ。結人、莉久んトコ行ったら俺、凍え死ぬからな」 「え、八千代死んだらヤだ····。りっくん、八千代死んじゃうらしいから離れらんないの。僕のマフラー貸してあげるから許して?」 「ン゙ッ······いいよ。それじゃこれ借りてくね。次の休み時間は俺のことあっためてね」 「わかったから、マフラー嗅ぐのやめてね? あ、そろそろ教室戻んないとだよ?」 「はぁ〜····俺も結人にあっためてほしいな〜」 「「「ふざけんな」」」 「じょ、冗談だってぇ。お前らマジで恐ぇよ······」 「結人ぉ!! 雪!! 雪降ってる! 積もったら遊ぼうぜ!」 「びっくりしたぁ····啓吾煩い。ゆいぴがビックリしてるでしょ」 「あっは☆ ごめんごめん。職員室で雪降ってんの見えたから早く結人に教えたげようと思ってさ。沢っちにプリント渡して走って来たんだよ」 「ありがと、啓吾。僕もね、ついさっき気づいた。積もったらいいね。また人型やりたいな」 「だな。雪だるまも作りてぇ。つぅかなんで莉久、学校ん中でマフラーしてんの? んなに寒いか?」 「寒いだろ。マフラーはゆいぴが貸してくれたの〜」 「え、ズルくない?」 「りっくんも八千代もホント寒がりだよねぇ。僕も雪だるま作りたいな。あ、冬真も一緒に遊ぶ? りっくんと八千代は寒いからって遊んでくれないの」 「いいの? 遊ぶ遊ぶ〜」 「まぁ、遊ぶんだったら多い方が楽しいよなぁ」 「だよね。放課後まで降ってるといいね。ってほらぁ、ホントにチャイム鳴るよ?」 「ホントだ。んじゃ、また後でな」 「雪積もったら放課後また来るわ。てかお前ら、教室でイチャつくの大概にしとけよ〜」 「次の休み時間は俺がゆいぴにあっためてもらうからな!」 「······んっとにアイツらが来るとうるせぇな」 「賑やかだねぇ。ねぇ八千代、そろそろ離して?」 「チャイム鳴るまで離さねぇ」 「結人、莉久の次は俺な?」 「え、朔も寒いの?」 「別に、そこまで寒くねぇけど、結人にあっためてもらうのいいなって思って」 「えへへ。わかったぁ」 「ねぇ······。武居くんたちさ、ここ教室だってわかってる? 瀬古くん、初めに注意してたんじゃなかったの?」 「あ····わりぃ、場野と莉久だけずりぃなって思ってつい····」 「た、谷川さん····。ごめんね?」 「私はいいよ。むしろいいの。けど武居くん、そんなお花畑な顔しないで。他の男子が見てるよ。場野くんもね、あんまり武居くんを困らせちゃダメだよ?」 「あ? ぁに見てんだよ」 「八千代! 悪いのは僕たちでしょ。そんな凄まないの」 「····おぅ。悪かったな」 「ホント、場野くんに言うこと聞かせるなんて、武居くん凄いね······」 「んぇ? 普通····だよ?」 「おい、とっくにチャイム鳴って先生来てんぞ。場野、さっさと結人離してやれ」 「お。また後でな」 「もう、頭撫でないでよぉ····」
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