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「私たちさぁ、何で別れちゃったのかな?」
「忘れたよ、もう、そんなこと……」
「何よ、私、けっこう真剣だったんだよ」
「嘘つけ」
「嘘じゃないよ」
溜息が出た。まだ、頭の奥が霞んでいるようだ。もしかしたら、これは、酔った末に見ている夢ではないか、とさえ思った。
「みんな、私のこと誤解してた。私、本当は恋愛に真剣だったんだよ。表向きだけで、遊んでる女だって思われて……」
少し寂しそうに言う沙梨。
確かに、そう感じたことが何度かあった。噂と違い、この女、もしかして真面目なんじゃないか、と……。
当時の記憶が、雪崩のように蘇ってきた。
つきあい始めてしばらくして、沙梨の意外に一途な面を垣間見て戸惑った。だから面倒に感じて、別れようと思ったのだ。
そういえば……と妙なことを思い出す。
この部屋で一緒に飲んでいるとき、沙梨は変なサイトに登録した。それは「永遠の愛の約束」とかいうお遊びサイトだ。どちらかが裏切った場合、何か罰を与えられる、という触れ込みの……。
沙梨はふざけて「その場合は伸也を食べちゃおうかな? 丸呑みにして」と言いながら、そのままをサイトに入力していた。
酔っていての戯言だが、その時一瞬真剣な表情になり、鋭い目つきでこちらを見てきたのが記憶に残っている。
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