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ふと、ある事に気づき、背筋が凍った。酔っていたし不意のことなので忘れていたのだ。
風の噂で聞いた。
別れてから1ヶ月ほど後、沙梨は最寄りの駅で深夜酒に酔ってホームから落ち、電車に轢かれて……。
酔っぱらっての事故だろう?
誰かがそう言っていた。
「ちょっと待て、沙梨……」
声が震える伸也。酔いはあっという間に覚めた。
あれは、事故じゃないのか? もしかして自殺……そして、原因は……?
「どうしたの、伸也?」
「おまえ、確か……」
死んだはずでは……とは言えなかった。だが、彼女は悟ったようだ。
「フフ……。なんだ、やっと思い出したの?」楽しそうに笑ったあと、彼女の声は地の底から響くような激しいものに変わった。「そう、私の忘れ物はね、あなたへの罰よっ!」
ひっ、と叫んでスマホを布団の上に落とす伸也。
モニターには沙梨の顔。血まみれだ。真っ赤な目が彼を見据えている。そして、口を大きく開く。そこには、漆黒の闇が……。
モニターから飛び出した沙梨の顔、そして大きく開いた口が、伸也を呑み込んだ。
「ツー、ツー」という音だけが、闇の中に残った。
Fin
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