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01.世界は彩りを失い、凍りつく
窓の外は夕暮れ。空のオレンジ色の部分はさっきよりもずっと小さく、空の大部分に濃紺色が広がる。今日の終わりを知らせる空。そして空が完全に真っ暗になれば、日付がまた一日進む。
そんな考えが胸に浮かぶと、康生はモンスターの襲来に備える。
夕暮れの空のオレンジ色が完全に消えてしまえば、夜の闇とともにモンスターが現れる。
得体の知れない姿で、意味をなさない叫び声を上げながら。
そんなモンスターに人間にはなす術もなく、世界は灰色に染められてしまう。世界は彩りを失い、凍りつく。
康生はモンスターが襲来してしまわないよう、部屋のカーテンを閉め、視界から夕暮れの空を締め出す。
それからひとつ大きな息を吐き出す。それでもモンスターの口にする世界を灰色に変えてしまう雄叫びと、世界を破壊する音が聞こえてくる時もある。
そんなとき、康生はじっと息をひそめ、モンスターが過ぎ去るのを待つしかない。
けれど、康生がこの街を離れる日が一日ごとに近づくにつれ、モンスターは容易に立ち去らなくなる。
やがて、モンスターは夕暮れに限らず、康生の胸に居座ってしまうかもしれない。
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