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アンティークショップ・和
調子の外れたメロディの子守歌で育った子は――やっぱりちょっと変わっているのかもしれない。
商店街の端っこにあるアンティークショップ・和。
外観はおしゃれには程遠い黒ずんだ屋根瓦の昭和ティストの一軒家。
店先には大きな信楽焼のタヌキが長らく居座っているが、はからずも店の目印となっているので売るに売れない。
――笹の葉ぁ~ さらっ、さら~ぁ~
――軒端にぃ~ ゆ~れ~るぅ~
心地よい微睡を打ち破るテンションの狂った歌声。
その音程は絶妙に半音ほどズレて背中がムズ痒い。
ぞわぞわと鳥肌が立って伊織はたまらず重たい瞼をこじ開けた。
「――――」
起き出す気配に気づいたのか歌の後半は誤魔化すような鼻歌に変わった。
愛想のかけらもない青白い顔をのっそりとあげて睨むのは、店先の七夕飾り。季節のディスプレイと称して大家が無理やり店先に飾ったものだ。
――美人なお姉さんとお友達になれますように
――宝くじの一等が当選しますように
緩い風に揺れる短冊。書かれた欲望まみれの願い事は大家の冷やかしのオンパレード。
(……どれも絶対に叶わん願いだな)
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