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口の中のパイン飴の大きさが、最初の半分程になったところで、めぐちゃんに声を掛ける。
「…めぐちゃんさ」
「…ん…?」
「さっきは、私の何に対してそんなに怒ってたの?」
「……聞いてくれるの?」
「私、さっきそう言ったよ?」
「…飴で誤魔化したのかと思った…」
「それは、…私達二人のどっちに対しても失礼だよ」
「……ごめん」
「…いや、そこは謝るところじゃないと思う」
「でも、…ごめん…」
「……うん、別に気にしてないからいいよ。で、…話戻すけど、めぐちゃんはさっき、私のどこに怒る理由があると思った?」
「…ちーちゃんはさ、竹野内先輩のこと、…それに、私達みんなのことも、全部拒絶してるみたいだったから」
「……拒絶…?」
少なくとも私に取ってそれは、少なからず思いがけない、
そして同時に、充分以上に衝撃的な言葉だった。
まるで、…見えていてもまるで気にしてなかった角度から、抜き打ちに切り掛かられたような。
「うん…。だってちーちゃん、さっき言いかけてたのって、それ、…もしもの時は、自分一人が犠牲になれば、…先輩には、それに…外野にいる私達にもだけど、被害は及ばない、ってことだったんじゃないの?」
図星だった。
自分の喉が、我知らず「ぐぅっ…」という音を立てるのが判る。
「ちーちゃんさ、『自分は、今、特養にいる大伯母さん以外に家族はいないから、もし自分に何かあっても問題はない』とか、本気で思ってない?」
「……どうしてそう思ったの…?」
我ながら情けない事に、何やら声がひび割れ、震えてしまった。
めぐちゃんの顔を、今はまともに見られない。
恐らくめぐちゃんの方は、色白の頬を薄紅く上気させて、
例の大きな目をきっと吊り上げて、私を真っ直ぐに見据えているだろうに。
めぐちゃんの、抑えた口調ながらも、
ワイヤーの切っ先みたいな、ごくきっぱりした声と言葉が私の耳を打った。
「仮にも『小中高通しての相棒』を見損なわないで。
まったく、…ちーちゃんの馬鹿」
めぐちゃんには、今まで随分な回数「馬鹿」と言われているけれども、
今の分は、四半世紀余りの私の個人史の上で、一番堪えた気がする。
「……めぐちゃん、ごめん…」
「…別にいいよ…。でも…それ、本当は私に謝ることじゃないよ?」
「……うん…。でも、…本当にごめん…」
「…だから、……本当にもう…。こんなところで泣いたりしたら、他の人が見るよ、松島部長…。
ほら、…ティッシュ、封切ってないやつ。袋ごとあげるから。私の秘蔵の、高保湿のひりひりしないやつ。特別だよ?」
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