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ティムが店を出て少し進み、ふと振り返ると、もう店仕舞いをするのか、ドアには閉店の札がかけられていました。
「変な店」
ティムはつぶやいて歩き出しました。でも悪い気はしませんでした。ココアのおかげで体も温まり、小さなプレゼントまでもらえたのですから。
次に向かうのは、ネリーの家です。
ネリーはティムと同級生の女の子。ティムは門の前で立ち止まると、肩や頭に付いた雪をはらい落とし、咳払いをしました。
「ケーキの配達です」
さっきのニコラの店の時のようには大きな声が出ませんでした。そのせいか返事がありません。
ティムはもう一度、息を吸って声をかけようとしました。
その時、家の中から大きな音が聞こえました。そして窓からは黒い煙と咳き込む声が聞こえます。
「ネリー!」
ティムは窓を叩いて呼びかけました。
すぐに窓が開いて中からネリーが顔をのぞかせました。その頬や額が煤で真っ黒になっています。
「いったい、どうしたの?」
「失敗したの。新しい魔法にね」
「新しい魔法って」
驚くティムにネリーはにっこり笑って言いました。
「そのケーキの秘密を知る魔法よ」
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