【ショート・ショート】居酒屋ピエロ

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人生において「忘れられない人」が、皆さんにはいるだろうか? 僕はいる。 そして、その人に対して僕は未練も持ち続けていた。 どうして、あの時に勇気ある決断が出来なかったのか。 そう思う日々を繰り返した結果からなのか、僕はある日奇妙な夢を見た。 「俺はピエロだ。お前は人生において後悔している事を無いか?」 朴訥(ぼくとつ)なピエロの問い掛けに「ある」と答えた僕は、今現在まで続く学生時代の煩悶(はんもん)の原因をため息混じりに語った。 「なるほど。ならコレをやる。 一粒食べれば、人生で最も後悔しているポイントへ戻してくれる、不思議な金平糖だ。 もちろん、戻ったからといってその後の人生が自分の望むモノになっているかどうかは分からない。 けど、今でも後悔を引きずってるのなら、せめて夢の中でもその後悔を晴らして、悔いの無い人生を送りな。 そういう忘れ物を人生においてしちまってるから、お前はどうにもスッキリしない人生を送ってんだよ」 忌憚なきピエロの言葉に、僕は「余計なお世話だ」と苦笑する。 が、ピエロは一切動じず「この金平糖、枕元に置いておくから好きな時に食べな」と続けると、僕の夢から颯爽と消え去ってしまった。
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