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「いや、ちがうんですよ––––」
ちがうんです。誤解です。偶然通りがかったんです。
何度も説明したが、興奮状態の男は聞く耳を持たなかった。
ようやく誤解が解けたのは、兄聡志の「この子に危害を加えて、ぼくたちに何のメリットがあるんだ?」という言葉だった。
上手く答えらえないスカジャンの男は、「まぁ、それもそっか」と激情の火を消した。
男の名前はタイガといった。メメの兄であり、動画撮影の協力者でもあるらしい。
手にはハンディカメラを持っていた。メメが水着姿というのは、ユーチューブの企画だという。
タバコを切らしていたため、ついさっきコンビニに行っていたらしい。そのわずかなの間に、メメがなぜか倒れていたことになる。
「事件性があるかもしれないから、警察を呼んだほうがいいのでは」
聡志はタイガに提案した。
「うん。そうだな」
タイガは神妙な顔を作った。かと思ったら、
「でも、水着姿で仰向けに倒れてるって、なんか面白いな。ぷぷ」
と、ハンディを実の妹に向けた。
「おい、何撮ってんの」
「だって、面白いな~って」
「は? 妹が倒れてるんだぞ。なにが面白いだよ」
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