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シーズンオフには宿舎で自作のルアーをこしらえた。
木材をナイフで流線型に成形し、やすりでなめらかに仕上げる。それを割って針金を通し、頭にはラインを結ぶためのリングを、尻尾には錨型の針を取り付ける。
錘でバランスを整えてから接着し、外面を金属の薄紙で覆う。ウロコの模様を描いて塗料を吹きつけると、小魚を模したルアーの完成だ。
あるとき、彼――ケルンは木材を削りながら楽しそうに提案をした。
「スフィ島では空釣り大会が催されるんだってさ。賞品も豪華らしいよ」
「もしかして、私達も参加できるの?」
「ああ。でもオープンな競技だから、プロの空魚ハンターもこぞって参加するらしい」
「それ、入賞は無理じゃん!」
「だけど挑戦するのは自由だろ。レイラも飛行艇のライセンスを取ったら出てみないか」
「うん。じゃあ取っておくよ」
「よし本気だな、そうしたらどっちが勝つか勝負だ!」
塗料の香りと穏やかな空気に酔いしれる、幸せな時間だった。
けれど、ふたりが空釣り大会に参加することはなかった。
卒業が近づいたレイラは、生活のために仕事を探し始めた。必死に探したが、レイラ自身が要望に見合わないらしい。魔術を会得している者がひいきされるのは、アストラルの普遍的な価値観らしかった。
納得がいかず、しだいに苛立ちが募る。だから就職の苦労と不安をケルンに伝えたが、ケルンの返事はのんきなものだった。
「俺、将来は空魚ハンターになるから関係ないよ。やっぱり仕事にするなら楽しいことだよな」
「そんな甘い考えで食べていけるわけないでしょ。ケルン、私が大切なら将来のこと、真剣に考えて!」
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