釣り大会

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空魚はレイラのルアーを追いかけるものの、食いつく気配はなかった。次第に焦りが募る。焦りは手元を狂わせ、ルアーのアクションを雑にしてしまう。 かつて焦りからケルンとの未来を手放したことを思い出し、繋ぎ止めるような慎重さでルアーの操作を続ける。 けれど、そんな思惑を見透かしたかのように、空魚はなおさらレイラのルアーに見向きもしなくなる。 なんの成果も得られないままインターバルが挟み込まれる。飛行艇に設けられた鳥顔の忠告時計がその時を告げた。 「クックードウドルドゥー! これからインターバルに入ります、次のキャストからは無効です!」 がっくりと肩を落として港に戻り、飛行艇を着陸させる。 港では団体の挑戦者が釣果を見せ合っていた。皆、手堅く数匹ずつ確保している。釣れた魚の種類もさまざまだ。 その賑やかな雑談の中心にいたのはケルンだった。手にした魚のサイズは人一倍大きく、賞賛の声を浴びせられていた。 「さすが本職の空魚ハンターは違うねぇ」 ――あっ……。 レイラは期せずして、ケルンが夢を叶えていたのだと知り、同時に思い知らされた。就職活動の時に先へ進もうとした自分の方が、結局は夢に取り残されていたのだと。 どうしても好成績を収めて、ケルンに話しかけたい。あの時の時間を取り戻したい。心の中の渇望が密度をあげてゆく。 ――もう、あれを使うしかない。 レイラは意を決してタックルボックスを開き、ケルンの忘れ形見のルアーを取り出した。そのルアーをラインに結びつける。 大魚は警戒心だけでなく知性も高く、釣り人のキャストしたルアーを記憶しているのだ。けれど自作のルアーなら、彼らの記憶にはない。
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