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「クックードウドルドゥー! インターバル終了です!」
忠告時計が啼いた、その時だった。遠方から巨大な雲が流れてきた。強力な上昇気流が起きた時にだけ出現する荒雲だ。
地上の構造物を吸い上げて育ったその雲は、空魚の格好の隠れ家となっており、しばしば大物が潜んでいる。けれどその雲に近付くのは容易ではない。巻き込まれたらひとたまりもないからだ。
それでもレイラには秘策があった。
――私だって、だてに魔術書士を目指しているわけじゃないんだから。
レイラはペンダントからギムレットを取り出し握りしめる。自身の力では魔術を発動できないけれど、原動力さえあれば可能なのだ。
――行け、風の散歩道!
吹きつける風がふたつに裂けて、目前に静寂の道を作る。レイラはその間隙を縫うように飛行艇を進め、荒雲の風上に回り込んだ。
――ここからなら、チャンスがあるはずだ。
荒雲に向ってキャストすると、ルアーは風に乗って遠くまで飛び、雲の奥深くに沈んでいった。
――お願い、どうか掛かって。
アクションをかけながら慎重にラインを巻く。
突然、手元にガツンと強い手ごたえが伝わった。すぐさま引き上げようとするが、重くて動かない。
――しまった!
荒雲を狙えば障害物にルアーを引っ掛けてしまう可能性は高い。せっかくのケルンとの思い出を失ってしまうと、レイラは不安に襲われた。
慎重に雲に近づいてロッドの角度を変え、ルアーを外そうと試みる。
けれど突然、そのラインが勢いよく引っ張られた。
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