釣り大会

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身構えて両手でロッドをしっかりと握る。ケルンは船体の角度を変え、一気に急上昇させる。 ロッドがしなり、大きな弧を描く。まるで大岩を持ち上げるような重々しい感覚だ。 「くっ……腕が、痛いッ……!」 「絶対に離すなよ、!」 名前を呼ばれてはっとなった。ケルンはとっくにレイラに気付いていたのだ。 だから危険を犯して荒雲に近づくレイラの後を追ったのだと理解した。 だったら、そんな彼に弱気な姿は見せられない。腕に力を込め、歯を食いしばってロッドを立てる。 「クッ……!」 「見てみろ、魚が雲から出るぞ!」 振り向くと眼下に大きな魚の姿が見えた。長くて虹色に光る尾びれを持つ魚だ。 「「な……ナナイロヒカリウオ……!?」」 別名「神のオブジェ」といわれるそれは、空魚の中でも滅多に出会えない、天空魚の一種だ。 「まさか奴がレイラのルアーにかかるとはな。恐れ入ったよ」 「信じ……られない……」 レイラは奇跡のようなめぐり逢いに茫然とする。 その刹那。相手はレイラの油断を察知したようで、すかさず方向転換し、船体めがけて飛び込んできた。 「まずい、奴はラインを浮遊装置に絡めて墜落させる気だ!」 「どっ、どうすればいいの?」 「そんなもの、決まってるだろ!」 ケルンは艇身を大きく傾け魚との距離をとる。船の底面に回り込まれないようにするためだ。 それからラインを張った状態にし、魚の抵抗を弾力的に受け流す。時折飛行艇の進む方向を変え、相手を撹乱する。 相手は次第に体力を失い、仰向けになって泳ぎ始めた。 「油断するな、最後のチャンスをうかがっているはずだ」 「わかったわ。それなら一気に仕留める」 「やけに強気だな、レイラ」 「私の性格、知ってるくせに」
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