7人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「・・・最初、それは、せぇ!せぇ!って正面、坂ノ上、遠くから聞こえてきました。
せぇ、せぇ!って定期的にまるでこっちに向かって掛け声でもしてるみたいに。
それで僕らいよいよびびっちゃいまして。だっておかしいじゃないですか。人っ子一人いない深夜の夜道、新月の真っ暗闇の中でですよ、そんなワケわからない声が聞こえてきたんですもん。
しかも、その、せぇ、せぇって声、どんどん大きくなってきているように聞こえて。
それで僕らとにかく逃げよう、そう思ってまた振り返って下ろうと思ったんですけど、そしたら今度は下から、はぁ!はぁ!って聞こえてきちゃって。
もう生きた心地がしなかったです。
上からは、せぇ、下からは、はぁ。どっち向いても声が聞こえて。しかもどんどん大きくなってきて。そのうちには足音まで聞こえだして。僕は正直泣いちゃってました。怖くてパニックになっちゃって。
でもそのときクラブメイトの友達が僕の手を引っ張ってくれたんです。
それこそ僕は棒立ちになって泣いてたんだろうけど全力で引っ張ってくれて。それでガードレールも越えて少し下がった所にあったですね、収穫終えた畑に飛び込んで二人で抱きあって震えてたんですよ。
いえ。
いえ。
本当にそれだけなんです。
その後は上からは掛け声と足音、下からも足音と掛け声。
それがちょうど僕らの頭の上の道路、そこら辺でぶつかり合ったのかな?
そして一切の音が消えました。
あとはもう二人で震えながら畑の中で朝が来るのをひたすら待ってました。本当にそれだけなんです。僕らが知っていることは。
はい。
ごめんなさい。
それじゃあ失礼します。」
最初のコメントを投稿しよう!