手袋

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ひっ。 肺の奥で声にならない声が浮かび、飲み込む。 引っ張られた?背後に?右側から?右手を? それを察し、雪上に寝転がりながら空を見上げる。 怖い。怖い怖い怖い怖い怖い。 右を向くことはできない。有り得ない。有り得ないのだ。 僕のこの手を引っ張って、引き倒したのがアレだなどと、そんなことは有り得ないのだ。 もし仮に、仮に誰かがリフトから落ち、突き刺さって埋もれていたのならもっと雪は乱れる。だがこの場に僕以外の者の痕跡はなかった。有り得ないのだ。 だらだらと先程までとは違った汗が身体中を這う。全身を寒気が襲う。 そして再び気づく。 ここは山の真っ只中。木立に囲まれた白と黒の密室。 そこに僕はたった・・・ 『独りは寂しいよ。』 「うわっ!うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
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