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―――
ふと気づくと、僕は暗い闇の中にいた。暗すぎて立っているのか座っているのかわからない。僕は辺りを見回した。
何も見えない。何も聞こえない。そして思い当たった。
僕は一度ここに来た事がある、と。それはあの時。
城田さんと出会う前に悩んでいたあの時だ。
「城田さん……」
こんな時でも彼の名前を呼んでしまう自分が、酷く可笑しかった。
彼の顔を思い出そうとするも必ずあの彼女の姿が隣に浮かぶ。僕はギュッと目を閉じた。
僕はまだ迷っていた。迷って迷って、何でこんなに迷っているのかわからなくなるほど。
選べない。関係を続けるのか、別れるのか。
その挙げ句、僕の体は生きようとする事をやめた。
「もう、辛い……」
優しい顔で笑う彼と嬉しそうな彼女の顔を最後に、僕の意識はブラックアウトした。
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