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―――
「……ぃっ!……おいっ!」
「ん……」
誰かが呼んでいる。僕を呼んでいる。段々と覚醒していく僕の意識は、声の主が誰かという事に気づいて固まった。
「……しろ、たさ……ん。」
「大丈夫か!?」
「……え?」
すごく心配そうな彼の顔。こんな顔初めて見るなぁ、なんて場違いな事を思った。
きょろきょろと辺りを見回す。城田さんが運んでくれたのか、ベッドに寝ていた。
「来てみたらキッチンで倒れてたんだ。何で言わない。」
「え……何でって……」
「お前また眠れてないんだろう?何も食べてないようだし……」
「…………」
「何かあったら俺に言えと言っただろう。お前の悪い癖だ。人に頼らないで自分で何とかしようとしていつもこうなる。」
「離して……」
優しく僕の右手を掴んで脈を取ってる城田さんを振りほどいて体を起こそうとしたが、目眩がしてまたベッドに逆戻りした。
「寝てろ。これを飲んでまた一眠りすれば良くなる。」
城田さんが薬の袋を取り出して僕に見せる。おそらく栄養剤的なものだろう。そんなので良くなるくらいならこんなに苦労しない。医者の癖に、カウンセラーの癖に何もわかっていないんだね、と心の中で城田さんを罵った。
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