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第五話 真愛
―――
「僕を……捨てて?」
僕の発した穏やかでない言葉が、静かな部屋にこだまする。目を見開いたままの城田さんに焦れてもう一度口を開いた。
「城田さん。」
「何でそんな事を言う?」
普段よりワントーン低い声と何処か悲しげな瞳に見つめられる。僕はそっと目を逸らした。
「何があった!おい!!」
肩をガクガクと揺さぶられ、否応なく視線がぶつかる。
逃さないとでも言いたげな光を目に宿していて思わず怯んだ。だけど意を決して口を開いた。
「だって……」
「ん?」
優しい相槌に泣きたくなる。何で今日に限って優しいんだろう。
「本命の彼女が、いるんでしょ?」
「……は?」
「だから僕が……浮気なんでしょ?付き合ってるなんて思ってたのは僕だけで、貴方にとっては僕なんてどうでも良かったんでしょ?」
城田さんの顔が見れなくて俯く。目を閉じたら涙が一滴頬を伝った。
「顔上げろ。」
城田さんの言葉にまるで駄々っ子のように頭を横に振る。だけど無理矢理に顔を上げさせられた。
「何で……そんな風に思った?」
「だって女の人と歩いてた。2週間前、仕事だって僕に嘘ついて女の人とデートしてた!」
自分でも驚く程の大声が出たがもう止められなかった。
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