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「綺麗な人だね。スタイルも良くて。その時僕思ったんだ。あぁ、僕は浮気相手なんだな。だから手も繋いでくれないし、キスもしてくれないんだ。でもそれなら何で僕を受け入れてくれたの?僕みたいなつまんない男と半年も一緒にいるなんてどういうっ……!」
「黙れ!」
城田さんの苛ついた声が聞こえた瞬間、温かいぬくもりが僕の体を包んだ。
ビックリしてすっかり涙の止まった目を見開くとすぐ側に城田さんの後頭部が見えた。
「城田さっ……!」
「何も言うな。」
有無を言わせぬ口調に、言葉が途切れる。
「まずお前は誤解している。翠とはそんなんじゃない。あいつはただの幼馴染だ。」
「幼馴染……翠さんっていうんだ、あの人。」
「黒木翠。家が隣同士でな、昔からの腐れ縁だ。」
いつもとは違う優しい城田さんの声と力強い腕に、段々と落ち着きを取り戻していく。
だけどまだ引っかかるものがあって僕は口を開いた。
「でもあの日、ジュエリーショップに二人で入って行ったじゃないですか。彼女の指輪でも選んでたんでしょ?」
「はぁ〜……」
城田さんのため息にビクッと体が震える。何を言われても受け入れるしかない、そう思って覚悟を決めた。
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