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「最初は、その真っ直ぐなところに好感を持った。そして話を聞いていく内に段々と惹かれていった。気づいた時には……好きになってた。お前の方から告白されて、俺は舞い上がる程喜んだ。だけどいざ付き合うとなったらどうしたらいいかわからなくて、それであいつに相談したんだ。まだ手も握っていないって言ったら、殴られたがな。」
自嘲気味にそう言う城田さんに、僕の思考は途中からついていけてなかった。
ボーッとする頭でまだ続く城田さんの言葉を聞く。
「大事過ぎて手が出せないなんてな。でもそれだけ俺にとってお前は大切な存在なんだ。しかしそんな事で不安にさせてたんだな。悪かった。」
「そんな!僕の方こそ、勘違いだったみたいで……すみません。」
深く頭を下げるとポンポンと頭を叩いてくれる優しい手に、また涙が零れた。
「あいつとは本当に何でもないし、お前は浮気相手なんかじゃない。あの日は相談にのってもらった礼にネックレスを買ってやっただけだ。……納得したか?」
「一ついいですか?」
「何だ。」
「翠さんに相談したのって、いつからですか?」
「一ヶ月前からだ。」
彼の返事を聞いて、体から力が抜けていくのを感じた。彼の雰囲気が変わったと思ったのは丁度その頃からだ。
僕は思わず彼に抱きついた。
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