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―――
「ん……」
「はぁっ……友成。」
離れていく唇を追っていると、城田さんの瞳と目が合う。ドキリと心臓が動くのがわかった。
「あ……」
燃えるような欲情と慈しむような愛情を感じて目を逸らす。
「こら、逸らすな。」
「あ、だって……」
「あいつに言われた。とにかく目を見つめろと。目は口ほどに物を言うらしいからな。」
そう言いながら僕の顎に手をかけて、無理矢理目を合わせようとする。仕方なく目を合わせて後悔した。
さっきよりも熱い瞳に見つめられていて、背筋がゾクッとする。
「好きだ。こんなに簡単な事だったなんてな、お前に触れるのが。ほんの少し勇気を出せば友成をこんな風にしなくて済んだのに。」
そっと壊れ物を扱うように頬に触れる指。城田さんの顔を見ると切なげに歪んでいて、僕もそっと彼の頬に指を這わせた。
「僕が勝手に思い込んだんです。貴方は悪くない。」
「いや、俺は自分が許せないんだ。あんな事を言わせた自分が。」
「それを言うなら僕も自分を許せないです。あんな事言ったせいでこうして貴方が苦しんでる。」
『僕を捨てて』だなんて口走った自分を殴ってやりたい気分だ。勝手に思い込んで、勝手に苦しんで。
不器用だけど優しい愛をくれていた城田さんを信じられなかった自分が、心底許せない。
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