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普段は静かなこの場所に、似つかわしくない音が鳴り響く。それは甲冑のぶつかる音、そして剣がぶつかり人を切り、血をまき散らす音だった。
「殿下、このフロア制圧完了です」
「思ったより時間を要したな」
返り血を浴び、血の滴るマントを翻し王座に座るのは、豪奢な金髪に冷たい氷を思わせるようなブルーアイズを持つ男。
「そっ、そこはお前のような野蛮な人間が座っていい場所ではない!」
彼の前で両手の自由を奪われ、床に這いつくばるふくよかな体格にたっぷりなひげを蓄えた中年の男は、金糸で刺しゅうを施した優雅な服を纏っていた。
彼こそが神の国『グランバルド』と言われているこの国の国王、ジェイコブ・グランバード。その隣で貧弱ながら同じように豪奢な服を纏う青年が「そ、そうだ!」と小さくうめくように口にした。この青年はフレデリック・グランバード、この国の第一皇子である。が、威厳もなにもあったものではなく、閉じた口でもガチガチと鳴る歯、怯え切った顔からはもはや高貴さなど感じない。
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