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国が落ち着けば、新たな問題が露見する。いや、それを問題と思うかどうかは立場や思惑によるのだろう。
「殿下、即位式は滞りなく進めておりますが、進言したい議がございます」
宰相の言葉に、アレックスはうんざりした表情を各紙もせず「なんだ?」と聞き返した。先日まで宰相をしていた男は、死刑となった。目の前のひげを蓄えた初老の宰相は、アレックスが任命したクロード・ギース伯爵だ。
彼は今回の騒動で中立を貫いた人物である。皇后の脅迫にも似た服従命令を突っぱねた人物であり、その意志の強さを買われ今回の登用となった。
「お恐れながら、殿下にはこれまでも婚約者がおりませんでした。これまでは皇太子という身分でしたが、殿下は国王陛下となられる身。いつまでもお一人というわけには……」
「それはおいおいで構わんだろう」
「いえ、お恐れながら申し上げます。この国の行く末を考えましたら跡継ぎというのは必要不可欠。即位式にはせめて婚約者を」
「他にやるべきことが山ほどある。そんなことは──」
「そんなことではありません、殿下。王家に対する忠誠を集めるためには、貴族との」
「うるさい!」
少し荒げた声に、ギース伯爵は体を震わせ頭を下げた。そして、アレックスの「下がれ」の声に、もう一度頭を下げると部屋から出て行った。
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