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「殿下、ギース卿の肩を持つわけではありませんが」
そう進言したのは、ディランによく似た青年だった。
「分かっている、オーランド卿」
アレックスがそう呼ぶように、彼の名前はルーカス・オーランド。ディランの兄である。そしてディランが今、彼のそばにいないため、ルーカスが補佐官としてここにいる。彼らの父であるバスティアン・オーランドは、この度の皇后一派の行動を阻止できなかった責任を取り引退、家督を息子に譲ったのだ。
『そろそろ楽隠居させていただきたいと思っていたところです、お気になさらず』
そう言って笑いながら悪びれることなく、領地に戻ったことを知るものは少なくない。
「ディランであれば、もっと気の利いた言葉もあるのでしょうが」
「いや、あいつならきっとギース卿と一緒になって俺を責めただろうよ。卿でよかった」
「勿体なきお言葉」
恭しく頭を下げるルーカスに、アレックスは物足りなさを感じながら窓の外を見た。その方向には、あの国がある。
「……あちらも、なんとかしないとな」
ジェラルディンに戻ってきて3カ月の時が経っていた。
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