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「俺は、平凡な母でよかった。例えばフィーネの母の様に、話しかけ本を読んでくれるような……」
「も、もしかしたらアレックス様のお母様は本がお好きでは無かったのかも! きっとそうです!」
気遣うフィーネの言葉に、アレックスは苦笑いを浮かべる。どう考えても、自分の方がフィーネより恵まれているはずなのに、彼女を羨ましいと感じてしまうなんて……。
「かもな。本はおろか教会にも足を運ばず、ただ王の関心ばかり気にして自分を着飾ることだけに神経を使っていた女だったからな」
「……」
ここまで聞けば、もう繕うこともできない。世の中、愛し愛される親子関係だけではないことを、フィーネも知っているのだから。
「だから殺した、というのは正当な理由にはならないか」
「……え?」
一瞬、何を告白されたのか分からず、カップの中のミルクがぴちゃっと音を立てる。
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