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Q5.彼と私は何を思う?
(なんだか今日、色々なことがあった気がする…)
正直もうよく分からなくて何も考えずに横になりたくて堪らなかったけど、せっかく井ノ瀬君が届けてくれたのだからと英語の教科書を開くことにする。
"Q1.次の文章を読んで彼が伝えたかったことを書き出しなさい
Q2.それについて彼女はどう感じたかを書き出しなさい"
読んでいるはずなのに一向に頭に入らない英語の文章を目で追いながら、私は先ほど家に来た時の井ノ瀬君のことをふと思い出していた。
(…耳、かなり赤かったなぁ)
小学生の頃から既に、彼は穏やかで表情があまり変わるタイプじゃなかったけど。
その代わり耳だけは分かりやすくて、緊張したり感情が強く動いたりすると林檎のように真っ赤に色付いていたことを今更思い出した。
(すっかり遠い存在になっちゃった、なんて思ってたけど)
彼にもあの頃から変わっていないところが確かにあったのだ。
そしてそれは、耳だけじゃないのかもしれない。
(昔から優しかった。それに、すぐに気付いてくれた)
小学生の時、足を挫いて庇いながら歩いていた時も。
気に入っていた髪飾りを無くして落ち込んでいた時も。
「どうしたの?」と真っ先に声をかけてくれたのはいつだって彼だった。
(昔から優しくてしっかりしていて、そこが好きなんだよね…)
私の方はと言うと情けないことに、
井ノ瀬君が何を考えてるのか、何故
今回もここまでしてくれたのか。
それについて、ものすごく自分に都合のいいように考えてしまいそうになりつつ、でも自分がこれからどうするべきかは見えてきた気がしていた。
(明日学校行ったら改めてお礼言って、それから…一緒に中間の勉強したいって、言ってみよう)
彼に、もう一度自分の方からも近付いてみよう。
そうして、自分達の関係の答え合わせをしていきたい。
私はそう決めると井ノ瀬君からもらったビニール袋を開き、栄養ドリンクを一息に飲み干してまた教科書を開き直した。
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