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特になんの予定もないクリスマスイブの休日は、この上なく平凡だった。友だちから教えてもらったアイドルグループの動画を観たり、なにかおもしろいものが流れてこないかタイムラインを何度も下にスライドして更新を待った。
少し昼寝をしてから学校の課題と部活で作りかけだったテディベアをきりのいいところまで進めた。特別なことはなにもない休日。けれど最低限の充実感はある。いつもと変わらない過ごし方だった。
けれど今日はクリスマスイブ。午前中から母がはりきって夕飯の仕込みをしていたのを知っている。我が家では毎年恒例のクリスマスパーティーとツリーが、階下で待っているのだろう。
母の料理は好きだし家族と談笑しながら食べる食事も好きだけど、今日のようなイベント事に母や父、弟と同じ気持ちで臨むことができなくて、真綿が首にまとわりつくような息苦しさを覚える。だから、母の私を呼ぶ声が聞こえなければいいのにと、ほんの少しだけ願ってしまった。
けれど当然夕飯の時間はやって来て、母の声と同時に階段を駆け下りる英人の背中を静かに追いかけた。
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