青い夜にくるみは割れて

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「ねえ、ひとつだけ、最後に頼みたいことがあるんだ」  いつもの調子に戻った兵隊さんが話しかけてくる。 「なに?」 「僕を使って、くるみを割ってくれない?」  予想外の頼みごとにぽかんとしてしまう。遊ぼうと誘ってきたくらいだから、てっきりそういうものを想像していたのに。 「君たちを見守るのはとっても楽しいけど、一度くらいはこの口にくるみを入れてみたくて。ほら、一応僕はくるみを割るために生まれてきたからさ」 「……わかった」  頭の中で殻のついたくるみを想像する。願えばなんだってかなうのだから。  右手にはでこぼことした丸いものが握られていた。手を開く。想像したままのくるみが、そこにはあった。 「ありがとう、莉子ちゃん。それを口の中に入れて、背中にあるレバーを下ろしてくれる?」  兵隊さんは口を大きく開けて待っている。 木目がのぞく口にそっとくるみを置いて、言われたとおりにレバーを下げた。 「私の方こそ、ありがとう。兵隊さん」
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