青い夜にくるみは割れて

4/11
前へ
/11ページ
次へ
 ケーキを食べ終えた父と英人はソファーに移動しバラエティの特番を見ていた。私はクリームまで綺麗にさらわれた四枚のお皿を重ね、洗い物をしている母のところへ運ぶ。そのまま母が洗った食器を受け取り、拭いた。 「今年のパーティーはどうだった?」  心臓が跳ねる。 「おいしかったし楽しかったよ」 「そう、ならよかった」  簡単な返事しかできなかったが、母は満足そうに微笑んだ。それから視線を手元に落として静かな声で話す。 「莉子、来年は受験生でしょう? 今日みたいにみんなでゆっくりクリスマスを過ごすのは、ひょっとしたら最後かもしれないと思って。だから、喜んでもらえて嬉しい。……もう、どこの大学とか、なに系の学部とか、決めてるの?」 「まだ具体的には。でも、なるべく上を目指そうとは思ってる」 「そう」  微笑む母の横顔は、船から降ろした錨が砂地に深く沈むような安心感を生んだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加