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そうだ。中学に入学したばかりの頃、まだよそよそしい友だちとふたりで見学に行ったテニス部。
かっこよくて、やってみたいと思った。でも朝練とか試合とか、きっと手間をかけてしまうだろうと思って、結局緩そうな手芸部を選んだ。友だちはそのままテニス部に入って、それっきり疎遠になってしまったっけ。
「いいね! やろう!」
兵隊さんの声が響く。いつの間にか学校にあるテニスコートとそっくりの場所に来ていた。けれど校舎は見当たらず、青い空と人工芝が延々と続いている。服装も部屋着に裸足だったはずなのに、ジャージにシューズ、ご丁寧にラケットと黄色いボールまで握らされている。
「おーい! 早くー!」
すでにネットを挟んだ向こう側でラケットも持って待ち構える兵隊さん。ラケットを握れていることに関しては一旦無視をして、部活中に見下ろしていたテニス部員たちの動きをまねた。
腰のあたりからボールを放って、面に当てる。するとボールは真っ直ぐに兵隊さんの方へ飛んだ。それを兵隊さんは腰の入ったスイングでやわらかく返してくる。上手くない? つっこみたくてもボールは待ってくれない。とにかくラリーを続けることに集中することにした。
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