分岐点

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 「忘れ物をしました!」  「忘れ物は取りに来てはいけないことになっているだろう」  「わかってますけどっ、大事なものなんです! お願いします!」  食い下がる男子生徒に九野は立ちふさがっていた。昔、同じようなことがあったような。一瞬気が逸れた瞬間に男子生徒は強行突破を図った。伸ばした指先ほんの数ミリが届かず舌打ちして後を追う。必死に前を行く背中を見ながら既視感に惑い首を傾げた。  同じ場所、同じシチュエーション、思い出すワン・シーン。ああ、思い出した。自分も同じように取りに行こうとしたことがある。けれど、  「行かなければ」  あの日の学校へ。後悔をなくすために。そう、それは回収しなければいけないモノだ。何かが囁く。駆ける姿はいつかの制服姿に、心は生徒を追う教師ではなくあの日、15歳の自分だ。
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