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出来上がるまで気づかなかった僕に対し、さきちゃんはもっと早く気づいていた様で、なんだか落ち着かないそぶりを見せていた。
逆光で表情はよく分からなかったけど、大分沈んだ夕日がさきちゃんの耳を真っ赤に染めていた。
「なんかさ、サンタ、来たかも」
さきちゃんがそんな事を漏らした。
「え? 」
「だからお裾分け」
さきちゃんは立ち上がると僕の両頬に触れた。
口いっぱいにちょとだけ大人っぽい花の香りがあふれて鼻から抜けて行く。
感じた事のない柔らかな感触に僕はどうする事も出来なくて膝から崩れ落ちた。
そんな事とはお構いなしにあたたかなキャンディーは夢見るような甘味を舌の上に広げて行く。
「一つしかないもの上げたんだから、元気出すのよ」
さきちゃんはそう言うと小走りに去って行った。
夕日が沈んだ闇の中、僕は呆然と座り込み、鮮烈な衝撃と穏やかな余韻の中に居た。
覚悟。
サンタがやってきた気がした。
サンタはいつもいい子の所に来るわけじゃない。
必要な子の所に必要なものを届けるんだ。
さきちゃんを守れる男になれると良いな。
きっとなろう。
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