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「放せって言ってんだろ! 」
別の子が僕の顔を蹴り飛ばした。骨の薄い頬に靴の固い爪先が当たって思わず放してしまう。
その隙に自由になった相手は僕から離れ、四人は悪態をつきながら去って行った。
「待て!!謝れ!謝れよ!!謝れぇ!! 」
ガラガラになった喉が出せる最大限で僕は叫んでいた。
悔しくて腹が立って、上手く表現できない気持ちが渦を巻いて、僕は泣いていたんだと思う。
「逃げるなよ!! 待てよ!! 謝れぇ!! 謝れぇぇ!! 」
叫び続けた僕だったけれど、急に体中に痛みが現れて来てそれ以上声が出なくなった。
喉は潰れ、後先考えず殴りつけた拳はぶつけた相手の歯で切り傷だらけで、額も口の中も切れて、あちこち殴られたり蹴られたりして、今痛くないのは絆創膏が張られた膝だけだった。
弱虫の僕はもう泣くしかできなくて、ただただ膝を付いて泣きじゃくった。
自分の弱さとか、意気地の無さとか、積み重なってきたものがいっぱいいっぱい一度に僕を押さえつけているみたいでとても惨めだった。
それなのにすっと安らぎは訪れた。
「ケンタ、泣かない。泣かないの。終わったよ、もう終わったから。ありがとう」
そっと後ろから僕をさするさきちゃんの声。こんなみっともない顔を見せられなくて僕はそのままさらに声を上げた。
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