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優しくされたからなのか安心したからなのか、また涙が込み上げて来てたものだから、急いでそれをぬぐうとさきちゃんは小さく笑って僕の頭をポンポンと叩いた。
「またいじめられたら言いな。あたしがぶっとばしてげるから」
それが嬉しい事なのかそうでないのか僕にはわからなくて、さきちゃんの顔を見上げた時、他で遊んでいた1年生の女子達がさきちゃんを呼びに来た。
「さきちゃーん!おかあさんごっこ(ままごと)やろー! 」
「いいよ。やろう! ケンタも来る? 」
あんな情けない姿をさらした後、下級生の女子と一緒になんて遊べない。僕はかぶりを振った。
「そう、 入りたくなったらおいで。じゃいこう! 」
さきちゃんは低学年の子に人気だ。彼女が引っ越して来た1年前からずっとだった。
横暴な態度をとったり遊具を占拠しようとする子達に物申してみんなを守ってくれるし、面倒見が良くて男子でも女子でも本気で遊んでくれる。
弱い者いじめがあろうものならさっきみたいに容赦ない鉄拳制裁を加えて退散させてしまう。この公園を遊び場にしている子供の間ではヒーローみたいな存在だった。
髪に映える一文字のハチマキはその象徴の様だった。
特に僕の様な弱虫のいじめられっ子はお世話になる事が多かった。
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