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半ば泣きべそ声に変わったそれが、まるでヒーローものの小悪党の様な捨て台詞とともに遠ざかって行く。
うずくまる僕の頭にびりりと響く声は快活に雄々しく彼らを送り出していた。
「数揃えなきゃ何もできない奴等が吠えるんじゃないわよ! 」
男子が女子に口で敵うはずがないけれど、僕より三つ上のさきちゃんの場合腕っぷしもだった。
僕の同級生なら当然だし、それに加えて4年生や5年生を加えた5人が相手でも今みたいに全く引けを取らずに撃退してしまう。
襟の辺りで短くそろえた髪に映える額の辺りが真一文字になる様にキュッと締めたハチマキは、流行りの格闘ゲームの主人公を意識した物なのは明白で、女子なのに気に入らない相手には容赦なく鉄拳を振るう。
そのハチマキも年上の6年生相手に決闘して奪い取ったものだと言う噂もあった。
喧嘩によってこわばっていた公園の空気がいじめっ子達の退場でやっと緩んで、再びあちこちで声が上がり始めている。
「大丈夫? ケンタ」
「うん……」
僕は鼻をすすりながら顔を上げる。
「膝すりむいてるね、おいで」
さきちゃんは砂場の傍の水道に僕を連れて行き、そっと洗ってハンカチで拭ってくれた。痛かったけどこれ以上弱虫だと思われるのが嫌で口をキュッと結んで我慢すると、えらいぞと僕を撫でて、膝には絆創膏を貼ってくれた。
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