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 その年のクリスマス、我が家へ贈り物が届いた。中身は高級洋菓子の詰め合わせ。もちろん、贈り主はサンタクロース。とはいえ、現代のサンタクロースは、百貨店の配送伝票に連絡先を明記していた。  翌年も匿名のサンタクロースから、入浴剤のセットが届いた。  そして、3年目のクリスマス。ママと私も、サンタクロースになることにした。伝票に書かれた住所――須郷さんのアパートに押しかけて、3人でささやかなクリスマスパーティーを開いた。今思えば、彼にお付き合いしている女性がいたら、ちょっとした……では済まない誤解を生んでいただろう。その辺りは、ママも私も、パパに似て“こうと決めたら聞かない、頑固な所”があった。  私は、専門学校に進学し、看護師になった。人を助けたい――形は違っても、パパの、須郷さんの思いと一緒だ。やがて、私は彼からのプロポーズを受けた。その日もクリスマスだった。 「ねぇ、ママ……」  陣痛の間隔が短くなって、もうすぐ分娩室に移動する。その前に――。 「私、クリスマスに生まれて、良かった。世界中の、みんなが祝福し合う……こんな特別な日は、ないわ。本当に、ありがとう」  12月25日は――  私の誕生日。  寛翔さんが命を救われた日。  私達が結婚を決めた日。  そして。  私達の新しい家族が生まれる日。 「おめでとう!」 「ありがとう!」 「おめでとう!!」 【了】
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