23人が本棚に入れています
本棚に追加
ー7ー
その年のクリスマス、我が家へ贈り物が届いた。中身は高級洋菓子の詰め合わせ。もちろん、贈り主はサンタクロース。とはいえ、現代のサンタクロースは、百貨店の配送伝票に連絡先を明記していた。
翌年も匿名のサンタクロースから、入浴剤のセットが届いた。
そして、3年目のクリスマス。ママと私も、サンタクロースになることにした。伝票に書かれた住所――須郷さんのアパートに押しかけて、3人でささやかなクリスマスパーティーを開いた。今思えば、彼にお付き合いしている女性がいたら、ちょっとした……では済まない誤解を生んでいただろう。その辺りは、ママも私も、パパに似て“こうと決めたら聞かない、頑固な所”があった。
私は、専門学校に進学し、看護師になった。人を助けたい――形は違っても、パパの、須郷さんの思いと一緒だ。やがて、私は彼からのプロポーズを受けた。その日もクリスマスだった。
「ねぇ、ママ……」
陣痛の間隔が短くなって、もうすぐ分娩室に移動する。その前に――。
「私、クリスマスに生まれて、良かった。世界中の、みんなが祝福し合う……こんな特別な日は、ないわ。本当に、ありがとう」
12月25日は――
私の誕生日。
寛翔さんが命を救われた日。
私達が結婚を決めた日。
そして。
私達の新しい家族が生まれる日。
「おめでとう!」
「ありがとう!」
「おめでとう!!」
【了】
最初のコメントを投稿しよう!