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Happy holidays to you too! ②
「…うーん、どうしよう」
「そうか…まだ解決してないことがあったな」
リアムが悩む横で、長谷川は思い返していた。
年末に向けて乙幡がバケーションを取るので、ついでに長谷川も同じ期間休みを取ることにした。少しの間でも乙幡と離れてリフレッシュしようと思い、ヨーロッパにでも行き、ひとりでゆっくりする予定だった。
リアムも同じ時期に休みを取り、その間は日本に行くと言っていた。12月31日に日本で大型のイベントがあり、そのイベントにYOROIが出展されるという。
なんでも、その日本イベントではYOROIの限定品が販売されるという。どうしても手に入れたいリアムは、そのためにひとりで日本まで行くことを決めたようだ。日本行きの航空券、宿泊先を手配したと言っていた。
だが、リアムだ。そこはリアムなのだ。
手配した航空券は、間に入っているエージェントの手違いで取れていなかったと言われ、加えて宿泊先からは、日本到着予定の日だけ手配漏れがあり、ホテルを抑えることが出来なかったことが発覚した。
いつものリアムの『運』が発動したと、長谷川は思った。「ど、ど、どうしよう…」と、またいつものようにテンパっているリアムを横目に、毎回同じように不幸な事件が起きるのに、何故同じように毎回驚くのだろうかと、長谷川はため息をつく。そろそろ『運』に慣れてもいいのではないだろうか。
相手側の手配漏れのため、何とか調整してもらうように伝えても、年末年始シーズンのため当初予約していた金額では再手配は出来なかった。今からその金額では、ホテルも航空券も手配は出来ないと言われ、リアムは絶望的な顔をしていた。
そばで見ていた長谷川はイラつき、元々予約していた所を全てキャンセルさせ、長谷川が持つ最大限のコネクションを使い、航空券はファーストクラス、ホテルはスイートを手配した。
なので、長谷川のヨーロッパ予定はキャンセルとなり、リアムと一緒に日本に行くことを長谷川は決定したのだった。
「でも…でも…」とオドオドとしてるリアムに長谷川は「お前のその『運』を見てるとイラッとするんだよ。だから俺も行くから日本に。航空券もホテルも最初に予定していた金額でいい。それ以外は俺が引き受けるから気にするな。もう決定だからな」とあっさり決めたことを伝えた。
「絢士さん…絢士さん、聞いてる?」
「…ああ、うん。聞いてる…」
今回の日本行きを思い返していたので、少しボーッとしてしまった。リアムの声で現実に引き返してきたようだった。自分らしくない。こんな所を乙幡に見られたらまたイジられると思う。
「YOROIは今回、初の海外デビューなんですよ。しかも本場日本でネット配信することになったので、世界的に注目されてるんです。今回のイベントでは日本限定品が売られるから、どうしても欲しいんですけど…どうしよう…」
「YOROIってアメリカだけで人気があると思ったんだけど、違うんだな。世界的に人気になっていたのか…信じられん。ま、でも大丈夫だ。俺もそこに一緒に行くから…コレと、コレは俺が並ぶよ。で、お前はこっちとここに並べば全部買えるんじゃないか?」
リアムの今の悩みは、イベント当日の購入ルートだ。限定品ゲットは激戦となるため入念な計画が必要だった。
限定品は恐らく購入者も多いと予想されるので、並んで買うことになるだろう。そうなると、リアムひとりで全てを購入する場合、目当ての何点かは売り切れになるだろう。
だから、イベント会場の配置図を指さして長谷川はリアムに、限定品ゲットの協力することを伝えた。二人で手分けをして並べは欲しいものは全て購入出来るはずだ。
「絢士さん、本当にいいの?せっかくの休みなのに、僕に付き合ってて…僕、限定品は諦めてもいいかなって思ってます」
「諦める必要は無いだろ。手分けして買えばいいよ。俺は別に予定は無いんだから。それより、お前だけで行く方が心配だ。絶対、また何かあるはずだから」
ここまで来たら最後まで見守ろうと思う。リアムと一緒にイベント会場まで行き、限定品とやらを全部ゲットしてやろうではないか。そう長谷川は思っていた。
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