New Year's Eve ①

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New Year's Eve ①

「悠さん、お疲れ様です。今年は最後までいい仕事できましたね」 瀬戸に声をかけられ振り向く。大晦日の今日、ここで今年の仕事は終了だった。 「瀬戸さん、お疲れ様でした。やりましたね、本当に今年一年大変お世話になりました」 瀬戸のフォローはサンフランシスコに行ってからも続いていた。来年にはまた大きな仕事が決まっており、瀬戸と同じ現場になることもわかっていた。 「乙幡さんは?ここに向かってるの?」 「そうなんですけどね…この人混みだから、大丈夫かな…ちょっと心配ですね、会えるかな」 「そっか…ちょっと僕らはもう行くから会えないか、残念だけど。また連絡しますから乙幡さんによろしくお伝えください」 「伝えておきます。瀬戸さん、ありがとうございました。また来年頑張ります!良いお年をお迎えください」 「悠さんも。良いお年を!」 午前中に仕事も終わり、瀬戸と挨拶をして別れた。サンフランシスコでの仕事も順調に進んでいる。 携帯に乙幡からメッセージが入る。 どうやらこの会場には入っているようだが、会場内の規制もあるようで中々こちらに来ることが出来ないと書いてある。 「…あっ、エド?今どこかわかる?…うん、仕事終わった。瀬戸さん達も、もう帰ったよ」 電話をかけたらすぐに乙幡が出てくれた。乙幡は悠がいる東棟ではなく、西棟にいるらしい。東と西を繋ぐ連絡通路があるからそこで待ち合わせをしようとなった。 久しぶりの日本だが、ここの活気と熱気に圧倒されてしまう。冬なのに、この会場にいる人は、ほとんどが半袖だ。連絡通路にあるベンチに座り、悠はせかせかと歩いている人達を眺めていた。 遠くに乙幡の姿が見えた。こんなに沢山の人がいても見失うことなく、乙幡を確認することができる。待ち合わせをしてすぐに会えることも嬉しい。 「悠!」と、声を上げて小走りで乙幡が近寄ってきた。やはり熱気にやられたのだろう。上着を脱いでTシャツ姿になっている。 多くの人がいる中でも、やっと会えたと言い悠を乙幡は抱き上げ、頬にキスをされる。どこに行ってもこの人は変わらない。だから悠からも乙幡に抱きついて、頬にキスをお返しした。 「すげぇな、ここ。日本中の人が今日はここに集まってるのか?毎年やってるのかな…日本にこんなイベントがあるの知らなかったよ」 悠に会えるまでの途中で色々見てきたと、乙幡は言っている。漫画や本を個人が売っていた。それが面白くて、キョロキョロと見ていたら、いつのまにか外に出ていた。そこにはコスプレの集団がいて撮影会をしていたと、興奮気味に話をしている。 「めちゃくちゃ面白かった。でも、もうどこを通ってきたかわかんないから二度と行けないかも。ま、とりあえず、悠のブース見たいから連れてって」 乙幡が意外と楽しそうにしているのを見て、悠も嬉しくなった。乙幡は、仕事でも何でも自ら楽しみたいという姿勢が強い。だから、新しいこともすんなり受け入れて楽しむ姿が多く見られる。この人の好きなところのひとつだなと、悠は眺めていた。 悠がデザインを手がけたブースは大手ゲームメイカーの会社だった。新しいゲームを販売するにあたり、デザイナーを入れて派手な広告を作り上げた。 「へぇ…日本のゲームっていうか…別物みたいな感じだな。新しい?って、やつ?」 悠のデザインを見て乙幡が独り言をいう。 「うん、ここの会社もやりたいことを細かく教えてくれたから、仕事は楽しかったよ」 「俺さ、やっぱり悠のデザイン好きだよ。常に斬新だし…それにさ、メッセージを受け取って作ったってこの会社の人はわかるだろうから、嬉しいと思うな」 「えーっ、エドにそう言われると嬉しいな。僕がデザインを続けられたのはエディのおかげだもんね」 「あれ?悠、もうホテル帰る?帰りたくなった?エディって呼んだよね?」 ちょっと気を許してエディと呼んでしまった言葉尻を捉えられてしまった。 「ち、違うよ。たまたまだって。普段もエディって呼ぶことあるでしょ?」 「うんうん。そうだね、悠。いいよ」 「ちょっと、ちゃんと聞いてよ」 「聞いてるだろ?な、悠。愛してるよ」 じゃあ、帰ろうかと腰に手を回されて歩き始める。帰るにしても、人混みが激しく規制されているので、道順に沿って歩くしかないらしい。 ゲーム会社のブースを見ながら歩いていると、以前、長谷川とリアムがコスプレをしたゲーム会社があった。 「あっ!ほら、エド!あれが黒騎士のゲームだよ!ここのイベントに出てたんだね」 悠が指をさして乙幡に教えてあげた。今回もブースの前にコスプレの人達がいた。 黒騎士や緑騎士はいるが、もちろん長谷川とリアムではない別の人がやっているのがわかる。 「ええ!見たい。悠、ちょっと見ていこうぜ」と、乙幡が言うのでそのブースに寄ってみる。 ゲーム会社が頼んだであろうコスプレをした人達を眺めると、赤の女王に見覚えがあった。 ゲーム会社のブース写真をバシャバシャと撮っている乙幡を、コスプレの前に連れ戻し小声で伝える。 「…エド。あれ、水城ちゃんだよね?」 「えっえー!水城?あれが?」 「しっ!声が大きい!」 ものすごい挑発的ポーズを決めている赤の女王は水城のようである。 コスプレは写真撮影OKらしく、写真を撮る人の列が出来ていたから、その最後尾に乙幡と悠も並んだ。乙幡はもう既にワクワクとしているのが、丸わかりである。 順番になり、携帯で撮影していると赤の女王が素に戻ってこっちを見ているのがわかった。悠と乙幡だと気がついたのだろう。 「すいませーん!女王さん、目線をこっちにもらっていいですかぁー?」 と、わざと乙幡が水城に声をかけている。 こんなところで会うとは水城も思ってなかったから、苦笑いしているのがわかる。 乙幡は笑いながら携帯で連写していたが、水城も負けていなく、乙幡の携帯に向い、今までで一番挑発的なポーズをしてくる。 それを横で見ていた熱狂的な赤の女王ファンのフラッシュがめちゃくちゃ鳴り響き、乙幡の方が圧倒され呆然としていた。 「ほら、エド、もうやめてこっち来て」 順番を次に譲り、横に逸れて水城を見ることにした。 「…あいつ、すげぇな」 「もう、だからやめなって言ったの。熱狂的なファンがいくらでもいるんだから」 クスクスと笑いながら乙幡を見ていると、コスプレを撮る列にまた知った顔を発見した。 「うそ!えっ?」 「ん?何?悠どうした?」 撮影待ちの中に、長谷川とリアムがいるこがわかった。向こうはこっちに気がついていない。咄嗟に声を上げた後、乙幡を見ると既にもうニヤついていた。 乙幡は長谷川をロックオンするのが早い…
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