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「いつも、隣の……相澤さんが、玄関を出て階段を下りる音を聞いてから私も家を出るようにしてたんです」
「え、なんで?」
「独り暮らしの友達が、同じアパートの男性からストーカー被害受けたって聞いて怖くなって……。うちの隣は男性だって大家さんが言ってたし、家を知られるのが一番危険だって言うから……」
「まぁ確かに。女性の独り暮らしはそれくらい気をつけたほうがいいと思うよ」
俺はそう返した。
これからは忘れものをしなくても彼女に会えるとわかってホッとしたのも束の間、今度は不安が押し寄せた。
告白してうまくいけば、毎日でも彼女と顔を合わせることが出来るようになるが、失敗すればストーカー扱いされる可能性だってある。そして引っ越しを余儀なくされるだろう。
ゲームのようにリセットは出来ない。
どうしようかと悩んだ末、可愛い彼女を前に俺は腹を括った。
レアキャラを手に入れるには、それ相応の代償をはらわなければならない。そう思った時だった。
「相澤さんみたいな人が傍にいてくれたら安心なのに……」
彼女がそんなことを口にするもんだから……
「俺で良ければ」なんて口走っていた。
不意になにか忘れていることに気付いた。
腕時計は八時二十分を指していた。
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