001 プロローグ(1)

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001 プロローグ(1)

「うわッわわッ、なんだ、ま、眩しい! ブレーキが間に合わない!! 、、、オーマイガー、、、南無」 キュキュキュキュ、キュルキュルキキキィー、、、 チーーーーーーン。 それが大晦日の夜に平城白夜(20)が残した最後の言葉になった。 ☆ ☆ ☆ "ん、、、おや? 、、、ここはいったいどこなんだ?” 気がつくと僕は、美しい青天がどこまでも広がる空間の中で、僕はそれを眺めながらぽつんと立ち尽くしていた。足元をみると白くガスが辺り一面に立ち込めていて、それもまた果てしがなく続いていた。 これに似たような風景は以前にも見た覚えがあった。そうだ、日本一と名高い、あの富士山の頂上からみた雲海の景色が、今のこれと重なって見えたのだ。高校の入学記念のご褒美に、当時は大学生であった兄貴と共に富士山に登ったのが今は懐かしく思える。 しかしこの状況はそう楽しめたものだとは言えなかった。それはなぜなら、白いガスで足元が全く見えないということは、うっかりと前に進むと一寸先が危険な崖下かもしれず、僕はうかつに足を踏み出すことさえもできずにいた。 これからどうしたらいいものかと難しい思案顔をしていると、突然に白いモヤの中から僕へ話しかけているかのように、大きな声が聞こえてきたではないか。 『フアアァ、、、ぁッふ。おっともう着いておったのか。出迎えもせずにすまなんだな。少し気持ちよう眠ってしもうたわい。 いや大山津見神の親子が作った天甜酒があまりに美味なので、つい飲みすぎてしまっての。お帰りに土産というては八塩折之酒を持たされて、ここでもつい一献を飲んでしまったというわけじゃ。ふむふむ。その様子を見るとなじみの天獄使へ言付けていた通りに、お主をここまで案内してくれた様子じゃの。 どれどれ人間界の時刻は、、、と。 ふうむ、三ヶ日はとうに過ぎてしもうていたのか』 "三ヶ日?? 、、、あ、元旦!! 僕は12月31日の晩に、万病あらたかな回復のご利益があると噂される神社まで、兄貴夫婦の子供のために願かけをしようと車を出して、、、からどうしたっけ? あれれ? そうだ! 運転中に強烈に眩しいものが僕の車の横方向から突然に高速で現れて間に合わないと、、、それからはどうしていたんだ? 、、、、、 、、、 、 いやッ、いまはそれよりも、先ほどからのこの声の出処はいったいどこから?(キョロキョロ) ああっ! 後光のある金毛色した大きなキツネが、なぜかこちらを見ている! もしや、人語を喋っていたのもこのキツネなの??" 『キツネ、キツネとうるさいわい。吾のその存在は狐などには非ず。お前たち人間がいうところの神と呼ばれているものじゃ。吾は天界に住まう気高き天獣神なるぞ』 狐様はフンと不快そうに鼻を鳴らした。 "え。神様ですか??? でも僕に視えているのは、金色に輝いてる大きなキツネ様で、、、 いやまてよ、キツネにしては尻尾の数がいくつもあるぞ。それが扇状に見えているのは、、、やはり9尾ある! するとあなた様は名高くもある、あの九尾様でいらっしゃいますか?" 『ふふん。お主は今どきの者にしてみてはどうやら博識じゃの。そうか吾のことを九尾様という呼称で呼ぶのか。 たしか人間の暦歴ではそのような時代もあったのう。それではこれ以後、その呼び名を使うことを特別にお主に許そうぞ。 先にも告げた通り吾は天獣神である。この地上においては天狐とも九尾とも呼ばれる神の存在じゃ。 本来はこの姿で会うつもりはなかったのじゃが、うっかりと眠っていたせいで原形の姿でいたことを悔やんでいたところじゃ。本来ならばこちらの姿のほうで、お主と相見える予定だったのじゃが、、、』 (ドロンッ) "うわっ! 古典や伝記物の絵巻に出てくる神様とそっくりと同じ神様の姿になった!!! しかもこれまでに見たことのない、比類がないほどの超弩級の美女だ!" 『ホッホッホッ、これは人間用の神格モードとなった姿よ。お主たち人間にはお馴染みの人型の姿をとっておるのじゃ。 いまさらにこの姿を説明するというのも面倒じゃと思うていたが、お主が古典や伝記に精通しているとは思わんかったぞ。おかげで手間が省けたわい』 "古典は僕が好きなジャンルのひとつですね。いまでもたまに読んではいますよ。 ところでその超大物である九尾様が、凡人となる僕となにか関わりがあるのでしょうか?" 『う、うむ(汗汗)。まあそのことについて少し話そうか。 此度は百年に1周の節度のお役目で天から遣わされて地に下りてきたのよ。 吾は日本の各地に大小ある神々の社へ彼方此方と立ち寄って、神鏡の内に溜まった穢れを浄化して渡り歩いていたのじゃ。 そこでなんとも運が悪くも、今回はお主が運転をしていた車とやらが吾自身と地上で出くわしたとゆーわけじゃの。 さきほどにお主が言う吾との縁(関わり)は、こうしてできたといったわけなのじゃ』 "ははあ。それはなんともすごいことですよね。 九尾様のお使いの途中で僕がその事故に遭うなんて可能性、恐らくは数千万分の1の確率に驚いています” 『そうであろ、そうであろうぞ。吾もびっくり仰天驚きなのじゃ。道中を酒に酔って眠っていたとはいえ、自動操縦運転緊急回避システムモードは正常に動いておった。いま思い返しても不思議なことではあるな』 “その事故は記憶自体が僕には曖昧でよくわからないのですが。あっ、そうだとしたらここはどこなのでしょうか、、、あれ?いま確か、九尾様が事故のときに眠っていたとか言いませんでしたか?” 『ワワワッ! そ、そのようなことを吾は言ったのかの。と、とにかくはお主が困っておることの理由をまずは解いていくのが先なのじゃ。 お主の記憶がない理由の原因は、恐らくは吾とぶつかったせいじゃ。 吾と衝突したことはお主の肉体の消滅を意味する。その瞬間に前後の記憶はなくなるのかもしれん。 そしてここは天空へと通じる審判の大門の手前、いうなればこの世とあの世にある境い目じゃ』 "だとしたら、やはり僕は事故で、、、" 『残念なことに左様じゃ。 お主がここにいるということは、お主は一度死んで魂の存在になってしまったということじゃ』
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