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キラキラ・ハッピーデイ
「いっせーの、せい!」
「せい!」
ばばっと俺が差し出した手と、ちょっと遅れて弟の理貴が差し出した手。その上に乗っかっているのは、いくつかの百円玉と十円玉と一円玉だ。
「俺が五百二十二円で、お前が百十三円。……合わせて六百三十五円かよ」
計算してはああ、と俺は深くため息をついた。小学生のお小遣いだから仕方ないと言えば仕方ない。どっちも、一週間に百円ずつしか親から貰ってないのだから尚更に。とはいえ。
「理貴、お前さあ。わかってたんだからもっと溜めておけよ。百十三円はしょっぱすぎ。ちょっと前に溜めてたやつあったじゃん。何に使っちゃったんだよ」
「……兄ちゃんと一緒に買ったポケモンカード」
「ごめん俺が悪かった」
そりゃ仕方ないと言えば仕方ない。俺はあっさり弟への追及を諦める。二人仲良くパックを買って開封したのを思い出したのだ。あれを誘ったのは自分の方だった。
それに、友達と対戦するためにどうしても新しいパックを購入したかったのだからどういようもない。むしろ、先月までよく我慢していたと言うべきか。
「これじゃ、お金足らないかなあ」
理貴は泣きそうな顔をしている。
「結婚記念日、明日だよ。明日は二人ともお仕事でいないから、今日買わないといけないのに」
「だよな……」
そう。こんな会話をしている理由は単純明快。
自分達が大好きなパパとママの結婚記念日が間近に迫っていて、プレゼントを購入したかったからなのである。
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